エターナル・フロンティア~前編~

「……照れますね」

「暫くすれば、慣れるわよ」

 頬を赤らめながら「婆ちゃん」と言うソラに、レナはクスクスっと笑ってしまう。レナのソラに対しての印象は、真面目そのもの。そのソラが、恥ずかしそうに頬を赤らめているの。

 可愛らしくて愛しくて……レナの目は、いつの間にか孫を見ているような視線へ変化していく。

「あの……婆ちゃん」

「何かしら」

「食事の後、何処か行きたい場所はありますか? イリアや友達と何処かへ行くけど、婆ちゃんと二人は経験がないので……」

 何を言いたいのか自分の理解していないからしく、ソラの言葉は意味が掴みにくかった。しかし気持ちが通じたのか、レナは「動物園」と、意外な場所を指定する。勿論、ソラは頷き了承するのだった。

「おかしいかしら」

「いいと思います」

「昔、何度か行ったことがあるのだけど……最近は……ね。やっぱり一人で行くのは、ちょっと」

 レナの話では、女一人――特に老人が動物園にいると、周囲から不穏な目で見られるらしい。といって、老人が一人で出歩くのがいけないといっているわけではない。ただ、場所が問題という。

 世間の認識としては、動物園は複数で行く場所。そのような場所に、老人一人は目立つようだ。

「では、楽しみませんと」

「そうね」

 料理が出来上がるまでの間「次は、何処へ行こうか」や「日頃、どのようにしているのか」という話で盛り上がる。

 すると、ウエイトレスが二人分の料理を運んできた。先に置かれたのは、レナのモーニングセット。料理は、定番のトーストにオムレツにサラダ。そして林檎ジュースに、ドライフルーツが入れられたヨーグルトだった。

 一方ソラが注文した野菜スープは、予想以上に量がたっぷりだった。人参にジャガイモに玉葱。それに、緑色の物体はブロッコリーか。その他にコーンや小さく切られたウインナーが、入っていた。

 メニューに「野菜たっぷり」と書かれていたが、まさかこれほど具沢山とは――ソラはその量に一瞬驚くが、長時間煮込んだ野菜なので胃に優しく、胃がもたれる心配はないだろう。
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