エターナル・フロンティア~前編~
「いただきます」
「はい。どうぞ」
料理と一緒に運ばれてきたスプーンを手に取ると、具とスープを一緒に口に運ぶ。基本的な味付けは薄めだったが、長時間野菜を煮込んだことにより染み出した野菜の味が、絶妙だった。
「美味しいです」
「良かったわ」
案内した店の料理を気に入ってくれたことに、レナは満足そうに微笑む。そして彼女自身も、料理に手を付けていった。
先に料理を平らげたのは、ソラの方だ。彼は綺麗にスープを飲み干すと、優雅な仕草でスプーンをテーブルの上に置く。そして、レナに向かって「ごちそうさま」と、言ったのだった。
「やっぱり、男の子は食べるのが早いわね」
「あっ! す、すみません」
「いいのよ。男の子は、このようなものだから。元気で沢山食べて、元気に成長しないとね」
「オレは、もう……」
「ああ、そうね」
現在、ソラの年齢は19歳。そして、もう少しで20歳になる。成長期は、数年前に終わっている。
しかしソラの体格は華奢で、平均的な体重に達していない。レナ曰く、沢山食べてもう少し体重を増やした方がいいというが、沢山料理を食べられる体質ではないので結構きついらしい。
それを聞いたレナは、瞬時に意味を悟る。これも全て、例の話が関係している。といって、それを指摘することはしない。今は「孫と祖母」として、楽しみたいと思っているからだ。
何より例の話を行なうと、必ず暗い気分になってしまう。そうならない為にも、例の話は避けなければいけない。
レナは話を逸らすように、食事の後に行く動物園に因んで、どの動物が好きなのか質問をした。
「オレは……犬?」
「犬は、動物園にいないわ」
真顔で「犬」というソラに、レナはクスクスと笑う。確かにレナの言うように、動物園には犬はいない。しかし、ソラ曰く「動物で一番好きなのは犬」と言う。小さい頃はコロコロとしていて可愛らしく、成長すれば主人を守る勇敢な生き物に代わる部分がいいらしい。