エターナル・フロンティア~前編~

 ソラは出入り口に設置されている地図を頼りに、肉食系の動物が飼育されている場所を探す。

 目的の動物がいる場所は、動物園の右側。第一区画と第二区画に別れているが、幸い第一区画に肉食系の動物は飼育されている。それに現在の位置から歩いて、それほど時間は掛からない。

「婆ちゃん、此処です」

「では、行きましょう」

「はい」

 ソラは笑顔で返事を返すと、レナの右側を歩く。彼女は年齢の割には足腰は丈夫なのだが、万が一が考えられるのでソラは隣を歩き転倒に備える。そんな彼の心遣いに気付いたのか、レナは微笑を絶やさない。

「あっ! 狐だ」

「三本の尾の狐ね」

「確か、この狐って……」

「ええ、珍しい狐よ。保護条約で守られているので、取引の対象にすると捕まってしまうわ」

 それを聞いたソラはポケットから携帯電話を取り出すと、狐が飼育されている建物の側に設置されている機械に携帯電話を探し、情報を得る。これがあるので、特定の生き物を詳しく知ることができて便利だった。

 得た情報によると、繁殖を目的としてこの動物園で飼育されているという。この狐は極端に数が少なく、第三者の手を借りて繁殖を行なわないと、数十年後には絶滅してしまうのだ。

「乱獲が原因よ」

「ペット用ですか」

「見た目が、いいのよ」

 レナの言葉に、ソラは納得したように頷く。目の前にいる狐のサイズは、大人で約30センチ。美しい純白の毛並みは宝石のようで、クリクリとした緑色の瞳は愛らしい。見ているだけで、口許が緩んでくる。

 その時一匹の狐が、床に背中を擦り合わせはじめる。背中が痒いのか、クネクネと身体を動かしている姿は何とも可愛らしい。それを表すかのように、狐の姿に黄色い悲鳴が上がる。

「何だか、わかる気がします」

 このような愛らしい姿を見ていると、この生き物を欲する人物が出てくるのはわかる気がする。レナの知っている人物の中にも、この狐を飼育していた者がいたという。勿論、裏ルートで手に入れたらしい。それを聞いた時、ソラの脳裏にユアンの顔が鮮明に浮かんだ。
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