エターナル・フロンティア~前編~
しかしレナの年齢を考えると、いつまでも駆けているわけにはいかない。それに動物園の敷地内は、意外に起伏が激しい。また年を召した方は、上り坂より下り坂の方が危険が大きい。
現にレナは、歩き難そうだった。それに気付いたソラはレナの手を握ると、自分が支えとなって転倒を防ぐ。
今二人が歩いている場所は、コンクリートが一面に敷き詰められている。このような場所で老人が転倒したら、確実に骨折してしまう。
また、下手したら複雑骨折の可能性が出てくる。それを防ぐ為に、ソラはレナの支えとなって歩いて行く。
「あれ……かな」
「ええ、そうね」
一定の歩調でトコトコと歩いていると、目の前に目的の動物が飼育されている檻が見えてくる。ソラは檻の前に設置されている看板に視線を向けると、目的の動物であっているか確かめた。
「正式名は、これなんだ」
「長いわね」
「個人的な感想なんだけど、どうして正式名ってこんなに長いんだろう。短くていいと思うけど」
「理由があるのよ」
元科学者ということもあって、名前の付け方に隠された理由を理解している。一般人にしてみれば、このような長ったらしい名前を付ける理由がいまいち理解できない。しかし、名前には様々な理由が含まれているという。そんなレナの説明にソラは、思わず首を傾げていた。
「難しい?」
「いえ、そういう訳では……」
「だから、一般的な名前があるのよ」
「なるほど」
これもまた、半分理解し半分理解していない。だが、レナが言うと納得してしまうから不思議なもの。これもレナの人徳がなせる業なのか、ソラは目の前にいる動物を眺めながら唸り声を出していた。
「ソラ君は、こういう動物は好き?」
「そうですね……普通です」
前に言ったように、ソラは動物の中で犬が一番好きだ。その他の生き物では、猛禽類にトキメキを感じるらしい。特に、腕に乗るサイズの猛禽類が好みという。といって、猛禽類を一般家庭で飼育するには許可が必要だ。また脱走した場合、近隣住民に迷惑を掛けてしまう。