エターナル・フロンティア~前編~
「その名前は?」
「犬を飼育した時に、この名前を付けようと前々から考えていたのです。気持ちだけ、先走って……」
「名前まで考えているのなら、買いに行きましょう」
「いえ。本当に、まだ……」
レナの気持ちは凄く有難いのだが、犬を飼育する――とまで、なかなかいくことができない。
なんだかんだで、踏ん切りが付かないのだ。それに飼育の前に、ネットを使用し飼育の仕方を勉強しないといけない。
生き物は餌を与えていればいいというわけにもいかず、適切な飼育方法と深い愛情を注がなければ死んでしまう。正直、事前の準備が無いとソラは自信を持つことができないのだ。
だから、レナの言葉をはぐらかし「後で」と、言い続ける。ソラはレナを一瞥した後、目の前でコロコロとしている生き物に視線を向けた。その時、子供の甲高い声音が二人の耳に届いた。
ソラは反射的に声音が響いた方向に視線を向けると、彼の視界の中に入って来たのは幼稚園児の団体。着ている制服は、出入り口で出会った幼稚園児とは違う。どうやら、別の団体も来ているようだ。
「あらあら、賑やかね」
「婆ちゃん。別の場所へ行きます?」
「どうして?」
「人気の生き物って、混むし……小さい子供って、暴れたりするから婆ちゃんに迷惑が行くんじゃないかと……」
レナは最初、ソラが「子供が嫌い」だから場所を変更したいと言い出したのかと思った。だがよくよく話を聞くと、それが違うと知る。ソラはレナの身体を心配し、この場所から離れようと提案したのだ。
彼が言うように、小さい子供は予想外の行動を取り、一度はしゃぐと簡単に止めることができない。落ち着きのない行動の結果、レナが怪我したら――それを心配し、ソラは提案したのだった。
「年寄り扱い……でしたか?」
「そんなことはないわ。私は、無理に若作りはしないことにしているから。それに、ソラ君の気持ちは嬉しいわ」
世間一般の認識では、ソラ達は感情のままに力を使用する恐ろしい存在と思われているか、それは間違いである。ソラは相手を思い遣り、相手の心情を理解することができる。昔から知っているレナにとって、些細な気遣いができる人間に成長してくれたことが嬉しかった。