エターナル・フロンティア~前編~
第二話 能力者
イリアは変わり映えのない、朝を迎えた。今日の空は雲ひとつない快晴で、彼女はいつも通りの時間帯に起床すると部屋の窓を大きく開く。すると清々しい朝日が、朝の澄んだ風と共に室内に入ってくる。
欠伸をした後、寝ている間に固まった筋肉を解す。久し振りに自宅のベッドで就寝したので、お陰で熟睡することができた。それでも完全に蓄積していた疲れが取れたのではなく、身体が重く筋肉痛が全身を襲う。それらは一度の眠りで、簡単に改善されるものでもない。
「もう少し、寝ていたいな……」
机の上に置いてあった無造作に置かれていた研究資料が風によって捲れ上がり、パラパラと音をたてている。イリアはそれを手に取ると、いつも使用しているカバンに詰め込んでいく。今日は一ヶ月ぶりに銀河連邦の管轄下に置かれている、生物科学研究所(サイエンス・ラジック)に行く日であった。
忙しい反面、イリアは嬉しいという感情が強い。彼女が通うアカデミーと連邦の研究所は共同研究を行っているので、学生のうちから研究所に出入りする生徒は珍しくない。イリアもその中のひとり。クラスメイトの中にも大勢いたが、回数でいえばイリアの方が上だ。
その理由は、イリアは研究を進めるのが早かった。それに、アカデミーでの研究も満足な結果を出している。父親の職業が関係していると思われるが、それは全くの誤解といっていい。全ては、本人の努力の賜物だろう。宇宙港での友人達のやり取りを聞けば、火を見るより明らか。
真面目な性格は、このような時に得する。イリアはアカデミーの卒業に必要な単位は修得しているので、後は卒論を提出すればいい。だからアカデミーではなく、研究所を優先することができた。今日も講義が行われるが、出席日数も問題がないので安心して研究所に行ける。
(頑張らなきゃ)
研究所では、学生として扱ってはもらえない。一般の者達と同じ立場で、アカデミー以上に忙しい。それに発言力は弱く、見習い以下の立場といえた。それに、雑用や徹夜などが多い。
しかし研究内容には差別がなく、認められたければ実力を示さないといけない世界。科学者(カイトス)として生きていくには、それを覚悟しないといけない。それだけ、他の職業とは違う。
休憩を行う暇は無いに等しいが、研究はやりがいのあるものばかりであった。中には歴史に名を残せるかもしれない研究も任せられるので、進んで研究所に行きたいと言う者は多い。だが、実力で成り立っている世界。行きたいという希望が叶う生徒は、意外にも少ない。