エターナル・フロンティア~前編~

 卒業後は普通の職業に就いてもいいと考えている者も中にはいるが、少しでも肯定的な返事を行うと考える暇も与えられずに、強制的に連邦の研究所に引き摺り込まれてしまう。つまり今研究所に通っている学生は、卒業と共に研究所勤めをしないといけない制約つきだ。

 無論このことに対し不満を洩らす者もいたりするが、入ってしまえば部署を移るのは自由なので不満を洩らすのは最初のことだけだ。それに、最高クラスの研究設備が整っている施設。本音で「嫌だ」と言うも者は滅多におらず、殆どの者は「此処で働けて嬉しい」と言う。

「どれを着ていこうかな? 久し振りの研究所だし……これが良いかな。あっ! でも、こっちも良いな」

 クローゼットを開けると、お気に入りの服を選び出し着替えることにした。そして鏡に自分の姿を映すと、その服が似合っているかどうか、様々な方向から確かめていく。研究施設に行くだけだというのに、何故服装に拘るのか――この辺りも“女心”が関係していた。

「これなら、大丈夫ね」

 資料と私物が入った鞄を脇に抱えると、一階へ向かう。すると母親のヘレンから、父親であるダニエルは仕事に行ってしまったと知らされるが、イリアにとってはどうでもいいことであった。

 もし顔を合わせるようなことがあれば、昨日の続きを小言のように言われてしまう。そうなると、朝から気分が悪くなってしまう。それに父の小言は長く、特に例のことに関しては――

 イリアは、それが嫌であった。

 テーブルの上には、狐色に焼かれたトーストとミルク。それに、お気に入りのジャムが入った小瓶が置かれていた。イリアは椅子に腰掛けると天気を確認する為、テレビをつけた。

 適当にチャンネルを回していると、気象情報が放送されていた。その情報では今日は昨日の不安定な天気と異なり、一日安定した晴れが続くという。それだけを確認するとミルクを飲みながら、更にチャンネルを変える。すると、リゾート惑星へのツアー募集のCMが流れていた。

 場所は、惑星オルファニル。其処は真っ青な海が美しく、食べ物――特に海産物が美味しいことで有名な惑星で、CMの内容はこの惑星でダイビングを楽しむというものであった。

 イリアはトーストを齧りながら、友人達との旅行のことを思い出す。あれは、旅行という名前で表すことはできない。イリアは二人の付き添いのようなものであり、全く面白いと感じることができなかった。たまには、違う人と――そう、好きな人と行く旅行は楽しい。
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