エターナル・フロンティア~前編~
その酸性雨は建物や木々を溶かし、結果として人々が住めない場所を生み出してしまう。それに形も今のとは大幅に違い、とても不恰好な形といっていい。昔の生活があってこそ今の生活があるというが、これまでの間に何も対策をしてこなかったのかと、イリアは調べた当時に思った。
現在は光のエネルギーを使い走行しているので、排気ガスという物は排出していない。お陰で青い空が広がり空気がとても美味しいが、文明の発展の影響で自然が少なくなったのも確か。
そのようなことを考えながら鞄から取り出した携帯電話で現在の時間を確認していると、急に重要なことを思い出す。今日はアカデミーに登校するのではないので、いつもの時刻に自宅を出なくても良かった。だからといって戻るわけにもいかないので、どうすればいいか考え込む。
すると何かを思い出したのか、イリアはポンっと手を叩く。それは昨夜迎えに来てくれたソラに、きちんと礼を言っていなかったことだ。イリアは昔から、このようなことに関してはシッカリしている。そのことはソラも認めているが、反面堅苦しいと思われているのも正直なところ。
それと、友人達からの頼みごともある。叶えてやる義理も何もないが、だからといって聞かないわけにはいかない。それに聞かなかった場合、後々何を言われるかわかったものではない。それに、回答は聞く前からわかっていた。彼は、絶対に断る。それに、こういうのが嫌いだった。
(いきなり行ったら、怒るかな。やっぱり、連絡した方が……)
イリアはソラに電話をしようとするも、幼馴染の体質を思い出し電話をしないことにする。そう、ソラは朝が弱いのだ。だからこそ電話をするより、直接起こしに行った方が効果的。
(いきなり行ったら、ソラ驚くだろうな。でも、起こしてあげないと。うん、行ってみよう)
イリアは自分自身を納得させるかのように力強く頷くと、駅とは逆の方向へ足を進めた。脳裏に浮かぶのは、不機嫌な表情を浮かべているソラ。これは幼い時から変わらないもので、あの表情は実に可愛らしい。それに今回は愚痴も加わるだろうが、イリアは楽しみの方が強かった。
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イリアの訪問があることを知らず、暖かい日差しを浴びながらソラはベッドに横になっていた。現在ソラは枕に顔半分を埋め、規則正しい寝息をたてている。一度友人から「寝顔が子供みたいだ」と言われた過去を持っており、確かにその寝顔は実年齢より若く少女に近かった。