エターナル・フロンティア~前編~
予想以上の握力で頭を押さえ付けられたことに、ソラの表情が歪む。結果、力の使用を防いだ。
「落ち着け、治療する」
冷たく冷静な声音であったが、その裏側には愛情も含まれている。ユアンはソラを特別に思い、彼の死亡を恐れた。彼等は置かれている立場が違うが、根本的な部分は似ている。だからこそ、ソラに執着する。
執着の対象は力の暴走は寸前で抑えたので、怪我は負っていない。問題は薬の投与による、内蔵面のダメージだろう。大量に血を吐き出しているのを見ると、予想以上のダメージを負っているに違いない。
投与した薬を解毒し、弱った内臓を回復の方向へ持っていく。そして、ソラの命を助ける。
しかし薬によって体力の回復は逆効果を齎すので、自然回復に頼らないといけない。時間は掛かるが、ソラの身体を考えると此方の方がいい。ユアンはそのように周囲で働いている者達に伝えると、ソラの顔に視線を向けた。
「気分は?」
「……悪い」
「まあ、そうだろう」
薬が体内に入ったことにより、身体が拒絶反応を示している。それにより全身が気だるく、吐血を繰り返している。しかし薬を体外に排出すれば吐血も止まり、気分が楽になるという。
彼の言葉に、ソラは無言で頷き返す。妙に素直な態度にユアンは喉を鳴らして笑うが、彼の反応はある意味で正しい。それに、ソラは馬鹿ではない。ユアンに対立するより、体力の回復の方を選んだ方が得策だ。そのように判断したのだろう、淡々と言葉を続けていく。
「あれは、本当?」
「彼女の父親か?」
「……そう」
「嘘は付かない。それに嘘をついた時、君に何をされるかわかったものではない。だから本当だ」
このような取引でユアンが嘘をつかないとわかっているが、取引の内容が内容。念の為に、再度聞いた。
イリアの父親が、何故過度に拒絶するのか。それは自分が持っている力が関係していると諦めていたが、ユアンの言い方では裏が隠されているのは間違いない。
そのあたりをハッキリしたかった。だが、真実を知ることも恐れる。隠された真実が悲劇的なものであったら、イリアとの関係に影響が出てしまう。最悪の場合、幼馴染という関係を切らないといけない。