エターナル・フロンティア~前編~
ソラの本音は、イリアと一緒にいたい。抱いている感情を言葉として出すことができれば、どんなに楽か。しかし置かれている状況と、何より世間が彼等の関係を許してくれない。
蓄積していく心情に、ソラの表情が曇っていく。そして、どのように足掻いても報われない人生を嘆いた。
ユアンは暫し、ソラを眺めている。しかし独特の雰囲気を悟ったのか、特に言葉を発することはしない。
ソラから視線を外した後、自身の側を横切った一人の男を呼び止め、ある物の用意をするように命令を出す。
命令を受け取った側は頭を垂れると、すぐに用意すると言い残しユアンの前から立ち去った。
命令を出した「ある物の」の用意が終わるのを待つ間、再びソラに視線を戻すと一言囁く。
「暫し眠れ」
ユアンの言葉が、眠気を誘う。ソラは重い瞼を閉じると、例の少年と出会った夢の世界へ戻る。
ソラから安定した寝息が聞こえてくる。それを確認すると、次に機械に表示されているデータを見る。
「ラドック博士」
「終わったか」
「はい」
「早いな」
「その方が良いと思いまして」
「勿論」
命令したことを短時間で行なう優秀な者達の集まりに、ユアンは満足そうに頷き返す。やはり自身の仕事を手伝う者は、優秀の方がいい。珍しくユアンは、彼等の行動を褒め称えた。
ユアンの言葉に、誰もが驚き目を丸くする。だが、感涙に浸っている場合ではない。今自身に課せられた仕事を行なわなければ、すぐにユアンの機嫌が悪くなってしまうのを知っているからだ。
「さあ、はじめるぞ」
「はい」
一斉に返事か返って来る。彼等の返事に頷き返すと、複数の機械を弄っていく。それに習うように、他の者達も使用していなかった機械の電源を入れ弄くる。ふと、何かトラブルが生じたのかユアンの手が止まる。そして暫く考え事をしていたが、自己完結をしたのか再び手を動かす。