エターナル・フロンティア~前編~

 何も知らない者がソラを見れば、十代前半ではないかと童顔だった。昨夜は帰宅と同時に寝てしまったのだろう、服装は私服のままでベッドに横になり、気持ち良さそうな表情の中で安眠を貪る。

 その時、チャイムの音が響き渡る。その音にソラは半分瞼を開くと、時間を確認する。七時半――いつもなら熟睡し眠りについている時間であった。安眠を阻害され不愉快になりのだろう、態とチャイムの音を無視する。無視していれば相手は留守だと思い、相手が帰ってくれると思ったからだ。

 案の定数回鳴らされた後、チャイムの音は鳴り止んだ。そのことにソラは安堵の表情を浮かべると再び深い眠りにつくことにしたが、次の瞬間、先程とは違いドアが何度も叩かれた。

(誰だよ、いい加減にしてくれ)

 布団を被りドアを叩く音を無視続けるが、一向に静かになることがない。すると、急に音が鳴り止んだ。今度こそ諦めてくれたのだと思い安眠を貪ろうとするが、再びチャイムの音が鳴り響いた。

 流石にここまで何度もやられると、無視することはできない。ソラは生欠伸をしながら重い身体を起こすと、朝から訪れた迷惑者を確認することにする。ドア近くに設置されたパネルを操作し、訪問者を画面に映し出す。するとそこに現れたのは、何とイリアであった。

(朝から、迷惑行為を……)

 イリアの登場に急に憂鬱になり、出るのを躊躇う。しかしチャイムの音はいまだに続いているので、ソラは渋々ドアを開けることにした。イリアの性格を考えると開けてやらなければ開けるまでチャイムを鳴らし続けるだろうし、このままでは近所迷惑になってしまうからだ。

「ソラ、おはよう。あっ! やっぱり、まだ寝ていたのね。もう朝なのだから、早く起きないと不健康になってしまうわ。それに友人と何処かに行くのが午前中からだったら、どうするの? 相手に、とても失礼になってしまうわ。ソラって、そういう部分が昔から駄目で……他のことは、シッカリしているというのに。そういう部分が、ちょっと意外なのよ」

 ドアを開けると同時に、イリアの第一声がこれであった。朝から説教を聞かされると思ってもみなかったソラは、不機嫌な表情を作る。先程のチャイムやノックといい、清々しい朝が台無しであった。しかしイリアは気にしておらず、それどころか自分の言いたいことのみを喋っていく。

 日頃のイリアから想像できないほどの早口。朝から舌が滑らかだと思わず関心してしまい、それに一度も息継ぎなしで最後まで喋り続けた。だが息継ぎなしというのは流石に苦しかったらしく、肩で息を繰り返している。それも酸欠状態で、顔は真っ赤に染まっていた。
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