エターナル・フロンティア~前編~
部屋の中に銃声と悲鳴が響く。しかしギリギリの位置で弾道が逸れ、ジェイクの命が助かった。
ユアンは鉛の銃弾を放つ銃を撃ったのは、これがはじめて。そして先程、ソラに懐いている子犬に噛まれた箇所が疼き出し弾道を逸らす原因となっていた。
ジェイクの命を奪えなかったことにユアンは舌打ちすると、白衣の袖口を捲り上げ子犬が噛み付いた箇所を見る。
噛まれた箇所が、赤く腫れ上がっている。手当てを断らず行なっておけば――と思うが、今更後悔しても遅い。
間接的であるが、気に入らない相手を殺す時にも邪魔する要因となるとは、ユアンは再び銃を構えると今度はジェイクの額に銃口を押し付け、力を加えていく。
勿論、噛まれた箇所が疼く。だがそれ以上に相手に対しての憎しみが強く、それが痛みを打ち消した。
一発目は離れた位置から撃ったので銃弾が逸れてしまったが、今銃口を額に押し付けているので逸れる心配はない。
(人間は脆い)
今のジェイクの姿は、実に醜い。半開きの口からは大量の涎が流れ、何より大量に失禁している。極限に追い詰められた精神が崩壊寸前にあるのか、年齢以上に老けた感じがする。
ああ、何と面白いか。
今まで多くの人間の肉体と精神を壊していった者が、逆に肉体と精神を壊されてしまう。因果応報というべきか。実に彼らしい人生の終焉の迎え方にユアンはクスっと笑うと、トリガーを引いた。
銃声に混じり、肉が潰れる音が耳に届く。刹那、大量の血液が脳味噌から噴出し床と壁を赤く染めた。
ジェイクの身体は撃ち込まれた鉛の銃弾の勢いで吹き飛び、椅子ごと床に転がっている。その姿は関節が全て壊された人形のようで、脳味噌からだけではなく目や鼻、それに口からも血が流れ出ている。
「ああ、最後の最後まで……」
ジェイクから噴出した血は、ユアンの手や白衣を汚す。汚らしい人間の体内から噴出した汚らしい血。それで自分の身体と白衣を汚されたことが気に入らないらしく、銃を額から離すと、ジェイクの腹を何度も踏む。
「それ以上、痛めるな」
その時、部屋の中に男の声音が響く。ユアンは声がした方向に振り返ると、ドアの側に立っている人物を確認する。意外な人物の登場にユアンは鼻で笑うと、男に何故そのようなことを言うのか尋ねる。また、今までのやり取りを盗み聞きしていたことを悪趣味と言った。