エターナル・フロンティア~前編~
ソラは頃合を見計らうと壁に寄り掛かり、欠伸を噛み殺しながら眠そうな声音で今日の予定を告げる。今日は特に予定が入っておらず仕事も休みなので、一日寝て過ごそうとしていた。それに久し振りに獲得した休日をイリアのよって台無しにされ、尚且つ安眠を妨害されたと話す。
「えっ! え~っと……その……御免なさい。でも、朝早く起きるって健康にいいのよ。だから起こされたことも健康のはじまりと思えば、いいと思えるけど。やっぱり……駄目かしら」
「ストレスと溜めるということは、健康に良いとは思えないけど。健康的というのなら、寝かせてほしい」
「ストレスになった?」
「かなり」
大音量でドアを叩かれ、更にチャイムまで鳴らされた。これでストレスが溜まらないという方がおかしく“健康に”と言うのなら、朝は静かに寝させてほしいとソラは心の中で呟く。
「だって、あのくらいしないと、いつも起きないから……ソラは、徹夜ばかりしているもの」
「周囲の迷惑も少しは考えないと」
「そう?」
その言葉に、ソラは無表情で横を指差す。その姿にイリア示された方向にゆっくりと視線を向けると、ドアを開け此方を睨み付けている住人達が視界に入ってきた。それも、殺気に似たオーラを放っている。朝の迷惑行為はソラだけでなく、多くの人にも迷惑を掛けていたらしい。
「謝った方が、いいよね?」
「謝りたくなければ、謝らなくていい。オレには、関係ないことだから。それに怒られるのは、イリアだよ」
「そ、そんな……」
「それじゃあ、頑張って」
自分は関係ないとばかりに、ソラは無言のままドアを閉めてしまう。するとイリアは慌ててドアを開けようとするが、見事に身体半分をドアに挟んでしまう。それに“ボコ”と鈍い音がし、ドアの角に頭をぶつけていた。そんな情けない姿に嘆息すると、ドアを開けてやることにした。
「痛ッ……」
このようなことでイリアが死ぬようなことはないが、後で後遺症が出たら厄介である。特にイリアの両親が厄介で、彼等は必要以上に騒ぎ立てるだろう。彼等はソラに対して厳しく、徹底的に追い込んでくる可能性が考えられるので、不必要な争いを避けたい――しかし、事は簡単に済まなかった。