エターナル・フロンティア~前編~
「イリア。悪い」
「閉めるなら、閉めるって……」
「だから、悪かった。しかし、何と言うか……状況は、イリアにとってもっと悪いかもしれない」
「何?」
再度、ソラは一定の方向に指を指す。ドアに頭をぶつけたことで先程の記憶が飛んでしまったのだろうか、イリアはキョトンとした表情で視線を横に向ける。すると記憶を取り戻したのだろう見る見る顔が青褪めだし、自分が何を仕出かしたのか嫌でも知ることとなる。
「謝ろう」
「皆の顔が怖い」
「あれだけの音を出すから」
「だって、ソラが……」
「オレが悪いのか?」
「暫く匿って」
「お、おい! イ、イリア。普通は謝るだろ」
「お願い。今回だけ――」
「全く」
「有難う」
「まあ、暫くいるといいよ」
今出て行くとなると、住民達の総攻撃が待っているだろう。これからの生活を考えれば不必要な争いは止めてほしかったが、彼女が住民達によって怪我を負ったらそれはそれで困ってしまう。それにより住民達の気持ちが治まるまで、イリアを匿うということを選んだ。
「でも、お陰で早起きはできた」
「でしょ!」
「調子に乗ると、痛い目を見るぞ。今回はこれで済んだけど……って、まだ怒っているだろうな」
「先程、十分痛い目に遭いました」
「自業自得だ。さて、匿ってやる代わりに、コーヒーでも淹れてもらおうかな。嫌とは言わせない」
「わかりました」
命令口調での指令だったが、イリアは快く頷きキッチンへ向かう。一方ソラはパソコンの電源を入れ、メールの確認を行なう。受信ボックスに納められていたのは一件だけで、差出人は車を貸してくれた友人。携帯から送信したメールなのだろう、いつもとアドレスが違う。