エターナル・フロンティア~前編~
『元気か? 昨日の俺の話、あまり気にするな。冗談だし。
それと、暇だったら飯を食いに行かないか。
いい店を見つけたんだ。美味いぜ、きっと。
昨日のお礼だ。
俺が奢る。安心しろ、金に関しては大丈夫だ。
それに、今後の為にいいだろ?
そういうことだから、返事を待っている』
相手の予定や都合を考えていない、一方的なメール。今日一日休みなので友人の申し出を受け入れることもできたが、今日は今日でゆっくりとしていたかったので、なかなか返答が難しい。
「はい、ソラ。淹れてきたわ」
どうすればいいか返答を考えていると、イリアはマグカップをテーブルの上に置く。香ばしいコーヒーの香りが鼻を擽り、コーヒーはブラックで飲むという好みを知っているのでミルクと砂糖は入れていない。
「有難う」
「どうしたの? 真剣な顔をして」
「いや、別に。昨日の疲れが残っているのかな」
「仕事、大変なの?」
「大変だな。だから、今日は昼まで寝させてほしかった」
嫌味たっぷりの台詞の後、コーヒーを一口口に含む。途端ソラの表情が徐々に険しくなっていき、相当苦かったのか懸命に胃に流し込むと、反射的にイリアを睨み付けてしまう。彼の表情にイリアは自身の失態に気付くが、態とではなく本気で分量を間違えてしまったようだ。
「なんだよ、この苦さは」
「だって、苦い方がいいと……」
「加減ってものがあるだろ」
「スプーン三杯って書いてあったけど、足りないと思って一杯多めに入れてみたの。やっぱり、いけなかった?」
「どのスプーンで?」
「大匙」
それを聞いた瞬間、顔を抑え大きく溜息を付く。ラベルに書いてあったのは“大匙”ではなく“小匙”あれは、凝縮タイプのインスタントコーヒー。大匙四杯も入れたら、苦すぎて飲めたものではない。逆に味覚がおかしくなってしまうほど、これは苦い液体であった。