エターナル・フロンティア~前編~

「今日は平気。アカデミーに行くのではなく、今日は研究所に行くの。だから、心配ないわ」

「そっか。イリアは、見習いだね」

「学生だからそんなに深い研究はできないけど、卒業したら立派な科学者(カイトス)になってみせるから」

「あ、ああ……イリアは、真面目に勉強しているから、なれるよ。ところで、イリア。その……いや、何でもない」

 心の奥底に溜まっていたものを質問として解放しようとしたが、寸前で止めてしまう。今、自身が気にしていることをこの場でハッキリさせてもよかったが、答えを聞くのが怖かった。

 “何故、能力研究の道を進まなかったのか”もし自分に引け目を感じその道に進まないというのなら、イリアの人生を狂わせてしまった。一時期、彼女は能力関連の勉強をしていたと聞く。それが何故、急に道を変えたのか。真実を知りたい。だが同時に、聞きたくないという思いもある。

「聞きたいことがあるなら、聞いてよ」

「本当に、何でもない」

「それならいいけど」

 イリアは物事を深く追求しない性格の持ち主なので、それ以上は聞こうとはしない。ただ、無意識にテーブルに置かれた写真立てに目が行き、懐かしい思い出のそれはイリアの記憶を過去に戻す。

「これ……」

「捨てられなくて」

「捨てちゃ駄目よ。大切な思い出なんだから」

「思い出……か……」

 ソラも、写真に写されている時代は大切だった。しかし、望んでも手に入らないモノが存在することを後で知る。母が死に父が死に――ソラの前から、何人の人が消えていったのか。

 両親は、どのように死んだのか。

 いきなり目の前から消え去り、自分を置き去りにした人は――

 そのことを思い出そうとしても、なかなか思い出せない。ただ、ひとつだけ鮮明に覚えている記憶がある。それは、誰ともわからない美しい女性が登場する。それはまるで、夢を見ているようだった。



(おはよう)

 脳裏に響く、美しい女性の声。貴女は、誰――

 始めて聞く声だが、とても懐かしい。
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