エターナル・フロンティア~前編~
第三話 逡巡
ソラは今、バイクで街中を走っていた。タツキとの会話の後、検査等の影響で帰りが夕方になってしまったが、友人との約束は間に合いそうだ。しかし女はどうして話し好きなのかと、ソラの嘆きは続く。
タツキは昔から世話になっており、それにあのように話すことは気分転換になっていい。ソラの生活は何かとストレスが溜まるのでその発散となっており、悪い面よりいい面の方が強い。
数十分後、一軒の店の前に到着する。そこは繁華街の奥に建てられた馴染みの店で、安い値段でありながら味は良く隠れた穴場となっている。店内はシンプルで落ち着いたデザイン印象的で、大半は女性客が占めていた。
「あれ? 何処だ」
しかし、先に到着しているはずの友人の姿が見当たらない。用事ができたというのなら連絡があってもいいものだが、そのような連絡がなかったので先に店に入っていると思われる。そう確信したソラは、入店する。案の定、予想は的中した。何と友人は、先に食事をしていたのだ。
「何だ、先に食べていたんだ」
「腹が減っていたんだ。悪い」
「いいよ。それくらい」
女性が多い店内で、男性の客は嫌でも目立ってしまう。それに相手は、赤髪という目立つ色彩の髪を後方で縛っている。結果、ソラは友人が使用しているテーブルは簡単に発見することができた。
ソラは適当に遅れた理由を話すと、椅子に腰掛け友人が食べている物に視線を移す。狐色に焼かれたパン。それに、彩が美しい野菜。どうやら、セットメニューを注文したようだ。
「お前が暇で、助かったよ」
「変な言い方だな」
「こう見えて、忙しい」
「自分で言うと、おかしいな」
「気にするな」
相手の名前は、カディオ・ブリジッド。ソラとは親友関係にあるが、彼はソラのように力は持っていない。だが、普通の人間として接し特別扱いはしない。その証拠に、普通に毒を吐く。
カディオはタツキほどではないが、ソラ達が置かれている現状を理解している。だからこそ、ソラとは良い関係を築くことができていた。彼等は怖い。多少なりともそのような感情を持っているが、差別までには到らない。それは彼の大らかであり大雑把な性格が関係していた。