ラズベリー
葵が演奏するのはピアノで『ピアノソナタ第7番』。
慣れているのか完璧な仕上がりだった。
(美怜ちゃん、
勝算はあるのかなぁ)
優輝にも確信が無かった。
ただ期待したいと思った。
「美怜、
こんな勝負辞めようよ」
「辞めない」
「でも、もう結果が
見えてるじゃない!」
「やってみないと
何も分からないから」
そして、葵の完璧で落ち着いた演奏が終わった。
パチパチパチッ
大きな拍手が聞こえた。
「最後に、
40番 山本 美怜」
中央へ行き、礼をした。
「あ、あの子。
迷子になっちゃった子や」
「だから言っただろ。
面白くなるって」
「あの子の実力、
お前知ってるんか」
「……全く」