ラズベリー


私は自分の部屋に戻ってきてからも、父と母の言葉を繰り返し思い出していた。


学校に通える嬉しさとメイドをするという戸惑い。


そして、東宮という名前の看板に新たな重みを再び感じていた。


(はぁ。
私やっていけるかな)


不安は積もっていくばかり。


そんな思いの中、急な支度でスーツケースに荷物を詰め込んでいく。


(いくらなんでも
明日は急過ぎるでしょ!)


腹立たしさも加わって、着々と進めていった。



ジリリリリリ…


朝の6時頃、東宮家に目覚まし時計が鳴り響く。


朝をこの家で迎えるのも当分の間はおあずけ。


ついに訪れた。


この日が来てしまった。


仕度を整えてスーツケースを持ってドアを開ける。


ある意味、門出にはもってこいの良い天気模様。


母は私を見て涙ぐんでいた。


父はティッシュで赤くなるまで鼻をかんでいる。


連絡は取りたくても出来ない決まりがあるらしい。


ポタンッ


私もつられて涙が頬を伝って、落ちた。


すごく悲しい。

涙を拭っても拭っても止まらない。


別れが辛い経験を初めてした。


辛かった。


でも私は振り切って、両親、執事にメイドに大きな声で「行ってきます!!」と伝えた。


どんなに涙が溢れ出ていても…。


私はくじけない!!


心に誓った。


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