ラズベリー
・出会いの季節
東宮の家から一歩でも出たら、私にとって完全な未知の世界。
行くときにお父さんが書いてくれた簡単な地図。
記された赤いハナマル印が『アリス学園』らしい。
(そういえば行く間際に
お母さん、何か言ってたな)
思い出そうとした時に私の前を車が一台横切った。
初めて車を見た。
自転車も見た。
ビルや神社、ホームレスも見た。
初めて見るコンビニ。
小さい子からおじいちゃん。
なかにはミニスカートをはいた、化粧がかなり濃い女子高生。
じっくりと観察してたら睨まれてしまった。
睨んでいるとでも思われたのだろうか…。
怖かった。
だから、お母さんに言われた事なんて初めて見るものの好奇心ですっかりと忘れていた。
気が付けば、もう昼頃。
お父さんがくれた簡単に書かれた地図によると、ここが赤いハナマル印のところみたいだ。
「えっと、もしかして
これがあの『アリス学園』!?」
美怜の前には白塗りされた壁、真っ赤な屋根、上には風見鶏がくるくると回っている。
かなり大きな学園があった。
(ここか。
まるで何かのお城みたい)
大きな1歩を踏み出した。