ラズベリー
「…そんな事、絶対に有得ません」
「あいつ、かなり心配してたなぁ」
天を仰ぎながら、また呟いた。
「……ちょっとお手洗いに行ってきます」
(((うわー、心の中見え見えじゃん…)))
それだけ言って、美怜は庭園を飛び出していった。
真っ直ぐの道を行く。
ただひたすら走った。
猛スピードで走り抜けた。
そこには人影が。
果樹園の前で優輝が小さくなってしゃがみ込んでいた。
(ハァ、俺、素直になれねー奴だな)
「香椎様!」
「うわっ!!」
突然、後ろから声がした。
「し、失礼な人、私はおばけ?ちょっと練習見てもらおうかと思ったのにやめましょうか?」
「い、いや。俺で良かったら見るよ」
「ありがとうございます。あの、これは何の花ですか?」
指差した先には可愛らしい白い花。
「ああ、ラズベリー」
「ラズベリー?」