ラズベリー
美怜は優輝の隣へしゃがみ込み、小さな花を物珍しそうに見ていた。
そのときだった。
小さな青虫が葉の裏からひょっこりと顔を覗かせていた。
「いやぁぁーー!!!」
美怜は叫んだ。
「耳が痛い…」
優輝は青虫を捕まえて向こう側へ逃がしてやった。
「もう、いないから、大丈夫だよ」
「ご、ごめんなさい」
そして再び、優輝の横にしゃがみ込んだ。
「なぁ、ラズベリーって知ってる?」
優輝はそう呟き、白い花を愛しそうに眺める。
「…知らない」
「知らないんだ。これ実が出来ると甘酸っぱくて美味いんだ」
「そうなんですか」
「実が出来たら今度、食べさせてやるよ」
「本当ですか。ありがとうございます」
美怜の嬉しそうな満面の笑顔に、心がくすぐったい気持ちになった。
「その代わりに約束、香椎様は無しな。2人いてややこしいから優輝にしろよな」
「…はい」