ラズベリー
「あと、敬語も無し。せめて2人のときはタメ語な」
「それを言うのは贅沢です。私の自由ですよ」
「可愛くない奴。いつか言わせてやるよ」
「……うるさいです」
彼女の表情は見ていて飽きなかった。
暖かい空気が充満していた。
まだ未熟な白い花が微笑んでいるようだった。
「よし、行くぞ。皆待ってるんだろ」
「はい」
そういって、優輝は強引に私の手を引っ張って庭園に向かった。
風が気持ちいい。
彼は優しく手を引いてくれていたから、苦しくなかった。
「音楽発表の時、応援ありがとうございました」
「えっ、美怜ちゃん、今なんて言った?」
「べ、別に何もないです」
真横でクスッと声がした。
「…///」
(やばい、こんな不意打ちは反則だろ)
顔が熱い。
分からないように顔を隠した。
優輝はしっかりと聞いていたが美怜は知らなかった。
こっそりとバレないように優輝も囁いた。
「俺、偶然でもお前のパンツ見て悪かった」
微かに言った言葉。
風の大きな音と混じってしまった。
(どうせ、さっきの風の音で聞こえてないだろ)
でも……。
(本当に不器用な奴)
ちゃんと、美怜の耳元に聞こえていた。