ラズベリー
そして、ついに美怜の番が来た。
審査員は美怜と優輝を見るなり、顔を曇らせて怒声を投げかけた。
「一体、どういうことですか!
この格好は……!!」
「………」
クスクスクス…。
その審査員の様子に、ハート寮の子達は笑いをこらえていた。
クスクスクス…。
けれども、恥ずかしくはなかった。
これが、私の、私たちの答えだから。
そこへ、ある1人の女の子が言った。
「山本さんは、きっと
時間が無かったんですよね。」
周囲が同調して頷いていた。
「本当ですか、山本さん。」
「違います!
これが私の答えですから。」
はっきりと胸を張って言った。
優輝もまた、首を縦に振る。
またクスクスクス…と笑いが聴こえる。
言い訳だとでも思っているのだろう。
もしくは優輝がバカだからだと思っているのだろう。
「分かりました。」
その後、しぶしぶながら審査員は上から下へと、優輝と美怜の装いをしっかりと確認をし、採点を帳簿らしきものに記していた。
しかし、この時に美怜と優輝が微かに笑っていたのを和輝は気付いていた。
(一体、何を考えているんだ…。)
「これで第一ステージ試験を
全て終了します。」
審査員の凛とした言葉とともに、全ての試験が終わった。