ラズベリー


そして、美怜も優輝の部屋へ行こうとした時、


「待って。」

「えっ?」


振り返ると葵が正座をしていた。



「気に食わないけど、
約束でしょ。」


葵はいきなり土下座をした。


「一応、約束だからしたわよ。
も、文句ないでしょ!」

「うん。葵ってさ、
実は仁義ってものを
ちゃんと持ってたんだね。」

「あんた一言多いわよ。失礼。」



葵は少し照れ隠しをしたように急いで去っていった。



(実はいい子かもしれないな。)


幸福な時間が美怜を包んでいた。

でも、その一時が一瞬で崩れ去るとは思いもしていなかった。



まだまだ困難はありそうだ。


あの、暗闇の隅で光る眼が6つ輝いていた。


そして美怜を見つめている。


全くその存在を知らなかった。



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