ラズベリー
(ヤバイなぁ。
でも俺に怖じけず、
睨んだ奴なんて初めてだけど…)
優輝は美怜をさらにじっくりと観察していた。
「………」
美怜は一言もしゃべることは無かった。
さっき、優しく声を掛けてくれた親切な人は本当にこの人だろうか。
信じられない。
そもそもこの優輝って人、何者だろう。
メイドが欲しいって事はどこかの御曹司か何かかもしれない。
美怜は明らかに敵意むき出しのまま、後ろを着いて行く。
2人の間には微妙な空気が吹き荒れていた。
「……あっ!!」
優輝から声が漏れる。
「な、何ですか!?」
用心し過ぎていたために思わず、びくっと反応する美怜。
「や、あの、着いたよ。ここ」
指差された『ダイヤ寮』は庭園の正反対の位置に建っていた。
「ありがとうございました」
つい、ぶっきらぼうなお礼の仕方をしてしまった。
「頑張って。美怜ちゃんが
俺と同じところに来るように
願ってる。じゃあね」
そんな訳のわからないことを言って、彼はヒラヒラッと手を振って、帰っていった。
単なる変人な奴なのか、親切な奴なのか。
よく分からなかった。
(…それにしても私、多分あの人よりも本当は上の位だと思うんだけどなぁ)
なぜか予感がした。
また彼に会うだろうと…。