ラズベリー
「赤いからやっぱり熱かな。
明日は舞踏会だし、休んどけ!」
「平気です。
もう甘やかさないで下さい。」
差し出された手を払いのけて、私は台所に立った。
でも頭にはずっと優輝のことばかりが浮かんでいる。
額に置かれた手のぬくもりがまだまだ消えそうにない。
「美怜。
なんか焦げ臭い!!!」
「えっ! あっ!!」
フライパンの中には真っ黒のベーコンエッグが出来上がっていた。
「やっちゃった。
ごめん。」
優輝がそれを見ながら耳元でささやいた。
「その言い方謝ってんの?
まぁ、良いけど…。ペロッ」
優輝はその黒い物体を口に入れた。
「あっ!
こんな失敗作食べないで。」
「なんで?
せっかく作ったのに。」
「お願いだから、
私を甘やかさないで…」
「どういうこと?」
だって、優輝のせいよ。
いつもいつも振り回されてばかり。
「すみません、失礼します。」
そのまま部屋を飛び出した。