ラズベリー
(ふーん、そういうこと。)
美怜が見ている方向を見てうっすらと微笑んだ。
ばれないように…。
「か、関係ないでしょ!」
相変わらず強がっている。
本当に、誰に似てしまったのだろうか。
「…いいから行きなさい。
あなたはまだ
『山本 美怜』のはずよ。」
「うっ……」
そして美怜が会場に戻ろうと背を向けた。
後ろから突然声が投げ掛けられた。
「ねぇ美怜。
幸せは自分で探すものよ。」
母は真剣な目で私をはっきりと見据えている。
「…え?」
「だから、
あなたの大事な人は誰?
もう見つかってるんじゃない?」
「うるさい!!!」
美怜はそのままダンス会場にかけて行った。
両親は少しずつ変わりつつある我が娘を見送っている。
「…一体どういうことだ?」
「いずれ分かりますよ。」
全く気付いていない父親の横で笑っていた。
(きっと、苦しいことが
起こるでしょうね。
彼のことが好きならば…。)