ラズベリー
・舞踏会に現れた少女
美怜は眉間にしわを寄せた顔で会場の柱にもたれていた。
(もう。お母さんの意地悪。
訳が分かんないよ!!)
ブツブツと呟いていた。
せっかくの舞踏会なのに不機嫌な顔つきで…。
カツン、カツンと足音が近づいてくる。
私に1人の男性が近づいて来る。
(…でも噂は事実だった。)
そのことに気付かないまま、すねてしまっていた。
「そこのお嬢さん、
ジュースはどうですか。」
声がかけられるまでずっと気付くことはなかった。
「えっ!?!?」
顔を上げると青色の仮面をした青年がいた。
「淋しそうな
顔をしてたから。」
彼はぶっきらぼうな様子でしゃべり始めた。
でも分かっていた。
彼は紛れもなく『香椎 優輝』だということに……。
「ありがとう。嬉しいわ。」
今の間だけは御曹司とメイドじゃない。
私の本当の姿。
御曹司とお嬢様。