ラズベリー


静かに音楽が鳴る。


♪♪♪♪♪~


彼が私の手を取り、腰に手をあてた。


その感じがくすぐったくて、恥ずかしくて変な感じがして仕方がない。


♪♪♪♪♪~


たださっきまでと違ったのは周りの声がさっきよりも気にならなくなっていたことだけ。


冷やかしも嫌味も妬みも感じなかった。


二人だけの空間かのように。


心に何か暖かいものが感じられた。


「上手じゃん。」


「リードが
上手いからだよ。」


♪♪♪♪♪~


周囲もだんだんと和らいでいく。


中央では美怜の桜色のドレスがなびいていた。


「キレイ……」


思わず、声が漏れてしまうほどだった。




あのあと、何度も何度も誰なのかどこのお嬢様なのか聞かれたが、一切しゃべることはなかった。


正体を絶対に明かさなかったからか、やっと諦めてくれたみたいだ。


(やっと解放された。)

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