ラズベリー
「ひっく……
ど、どうしてなの…?」
化粧も当然、崩れているのだろう。
仮面の裏側には黒いものがついていた。
それでもその仮面が愛しかった。
そっと眺めていた。
私はその場から動くことは出来ずにいた。
私の好きな彼は雅様の婚約者。
私は和輝様の婚約者。
それでも優輝は私である桜色のドレスの少女に一目惚れ。
しかし、家同士は争いが絶えないほどの最大のライバル同士…。
たくさんの出来事と真実に混乱していた。
「ど、どうして、
こんなにも大変なの…?」
こんなにも恋愛がしんどくて苦しいものだとは思ってなかった。
本当の私を探して欲しいだけなのに…。
胸がキリキリと痛み、締め付けられるばかり。
私を愛して欲しいと思うことはわがままですか?
その願いは罪深いものですか?
『私を見つけて…』
でも、それは届かない思いだったのかもしれない。
だから、優輝……。
幸せになってくれることを心の底で祈ってるよ。
───────…
その時、ベランダから泣き崩れる少女を覗き込んでいる人影が2つあった。
雲ひとつなく、星が照らし続ける夜だった。