ラズベリー
それから一週間過ぎたある日でした。
なんとなく庭園へ向かうと彼女がいたずらそうな笑顔で笑いかけました。
『久しぶりね。
また、お話ししようよ』
嬉しくて毎日毎日話しました。
2人の距離は少しずつ縮まっていました。
彼女には自分が御曹司であることを言わないまま…。
長い月日が過ぎた日のこと。
母親から許婚との縁談を完璧に成立させるという知らせが入りました。
許婚との結婚は当時、義務的なものでした。
『俺、結婚したい人がいる』
もちろんその意見には大反対です。
『その彼女はどこの家の方なの?
お金持ちのお嬢様?』
『………メイドの子です』
母親はさらに怒っていました。
まるで鬼の角でも生えているようでした。
翌日、彼は母親によって強制退学にさせられ、一週間後にはアメリカへ留学することになりました。
もちろん、彼女は何も知らないまま……。