ラズベリー
「全く分からない人は出来なくて当たり前。だから、見本を真似しながら生けてね。では、始めて下さい」
そして、スタートの鈴が鳴る。
やっぱり寮生活の一般人の子達は先生の一番基本型のものを見本にして作成していた。
でも、教育を受けてきた子達は独特の感性で生けていた。
「さぁ、何で生けようかな。
懐かしいなお母さんに
華道も叩き込まれたっけ…」
ジャージの腕をめくり上げる。
目を閉じた。
なぜか耳にはお母さんの声がした。
まるで隣で寄り添っているかのように。
聞こえた気がする。
『心を落ち着かせて
風流を楽しんで。』と──…。
始めて1時間後。
また鈴が鳴った。
「出来ましたね。各自、
先生たちに見せにきてね」
終わって、周りはざわついていた。
中央のテーブルで甲高い声が聞こえている。