ラズベリー


いきなりだった。


去ろうと後ろを向いていた私は、すぐに駆け戻ってきた。



「と、と、とう、東ぐっ!? ン───ッ!!!」


「もう、声が大きいよぅ。
静かに!!!」



わざと大きな声で言う英理の口元をきつく抑えた。


大きな声は多分、気を使ったからだろう。


分かっている。


でも、その態度が嬉しくて仕方なかった。



「プハ―!!もう!!
鼻と口の両方おさえられたら
苦しいでしょ!あ、苦しいです」


「英理!!敬語になってる。
今まで通りが良いって
言ったでしょ」


「あ、ごめん」



多分、今のもだろう。


でも、意地悪だから、『うれしい』なんて一生言ってやらない!


………つもり。



2人は白魚のソテーとエビフライを交換して食べながら話を続けた。


「うわ、でもこんなところで『東宮のお嬢様』に会うとは思わなかったなぁ」


「同じく。入れさせられるとは思わなかったよ」


「だろうね」


そう言いながら、美怜の白魚の身をを一口パクリッ。


「あ゙!!」


そこには満足そうな英理がいた。


< 89 / 222 >

この作品をシェア

pagetop