ラズベリー
いきなりだった。
去ろうと後ろを向いていた私は、すぐに駆け戻ってきた。
「と、と、とう、東ぐっ!? ン───ッ!!!」
「もう、声が大きいよぅ。
静かに!!!」
わざと大きな声で言う英理の口元をきつく抑えた。
大きな声は多分、気を使ったからだろう。
分かっている。
でも、その態度が嬉しくて仕方なかった。
「プハ―!!もう!!
鼻と口の両方おさえられたら
苦しいでしょ!あ、苦しいです」
「英理!!敬語になってる。
今まで通りが良いって
言ったでしょ」
「あ、ごめん」
多分、今のもだろう。
でも、意地悪だから、『うれしい』なんて一生言ってやらない!
………つもり。
2人は白魚のソテーとエビフライを交換して食べながら話を続けた。
「うわ、でもこんなところで『東宮のお嬢様』に会うとは思わなかったなぁ」
「同じく。入れさせられるとは思わなかったよ」
「だろうね」
そう言いながら、美怜の白魚の身をを一口パクリッ。
「あ゙!!」
そこには満足そうな英理がいた。