ラズベリー
・知らない素顔
美怜が向かった先は『ダイヤ寮』だった。
(お願い。理事長いてよ)
ガチャ
ドアを開けると1人ゆっくりとテレビを見ながらポテトチップスを食べていた。
「理事長。私の事情は全て聞いていると思います。挨拶が遅くなってすみません」
マグカップに入っていたコーヒーを飲みきって言った。
「ばれてしまったようね。言ったのは英理ね。後で絞める!」
「…あ、それは」
「気にしないで」
そう言いながらも顔は笑っていなかった。
「話したいことがあるんです。『伝説の女性』のことで…」
「…そう」
そして手招きをして私を向かいの席に座らせた。
「驚かれないんですね。私がここへ来ることも想定内でしたか」
「いいえ。私の所にこんなにも早く来たのは想定外でした」
「えっ!」
「だって、英理と
仲良くなるとは思わなかった…」
すねた口調で言いながらもポテトチップスを差し出してくれた。
「あ、ありがとうございます」