ロスト・クロニクル~前編~

 流石に、それは避けないといけない。国民は国の要であり、民が不幸の場合根っこから腐る。

 今、クローディアがギリギリの位置に存在する。

 フレイは、将来を危惧していた。

 だからといって、愚痴は言わない。第一線を離れても、影響力を持つフレイ。彼が弱みを見せたら、示しが付かないからだ。それに現在、親衛隊の隊長の地位に就くシードもフレイを支えとしている。それにより常に凛とした態度を見せ、周囲の目標とならないといけない。

 彼自身、それを理解している。

 しているからこそ、表情に変化は無い。

 暫く、沈黙が続く。

 耳に届くのは、風のざわめきと鳥達の鳴き声。

 ふと、フレイが口を開いた。

「シェラ様は、12歳だ」

「フレイ様?」

「まだ、婚約には早い。しかし、あの者は狙っている。年齢は、関係ない。そう、この年齢で迫っているのだから」

「恥ずかしいです」

「まあ、常識的に考えればそれが普通だ」

 12歳の女の子に迫っている、20過ぎの男。いや、ミシェルはそれ以前から好意を抱いていた。そう、シェラが10歳以下の時。こうなると「犯罪者」として捕まえた方が世の中の為と考えてしまうが、ミシェルはエルバード公国の公子。下手に手出しできないのが、現状だ。

「護れ」

「御意」

「さて、私は行く。流石にこれ以上いると、一部の者が騒ぐ。それに、息子を鍛えないといけない」

「エイル君ですか」

「そうだ」

「その……おめでとうございます」

「祝いの言葉を述べられるほどではない」

「失礼しました」

 良かれと言った言葉であったが、フレイの鋭い口調で制されてしまう。フレイの言葉に、リデルの身体が震える。すると瞬時に、リデル自身を嫌って怒ったのではないと取り繕う。要は、場所が悪いということ。それにフレイの一族は何かと目立ってしまい、噂になりやすい。
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