名前も知らない君を

バスが発車して、
ふと顔をあげると一番前の席に座る人と
ばちっと目があった。


なんと、昨日の男性だった。

(どうしよう、目が合っちゃった。私のこと覚えてるかな、うわ、うわ、どーしようー!!!)

頭の中でパニックを起こしていると
ぺこっと頭を下げられた。
つられて下げ返す。


すると、何事も無かったかのように
目線を下げ、スマホを触りだす。


(緊張した。はあ、もうなんなの、この気持ち。)

一度落ち着いたように見えたあのもやもやが一瞬にして戻ってきた。



しばらく考え込んでいて、
気づくともうあと3区間で学校につくところだった。

そろそろ定期を用意しておこう、と
思い、バッグの中を探る。

…しかし、いくらごそごそと探しても
一向に出てこない。

(最悪。昨日出しっぱにしちゃったんだ。今日はお金で払おう。)

そう思って、今度は財布を探しだす。















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