名前も知らない君を
大変な事態が発生した。
いくら探しても財布も出てこない。
(…どうしよう。無賃乗車とかありえないから!!)
友達が乗っていないか、という
淡い期待をしてバスの中を見渡す。
しかし、この時間。
乗っているのは他校生と
同じ高校ではあるが全く知らない人ばかり。
(やばい。終わった。)
絶望を感じていると、
クイッと制服をつかまれる。
後ろを振り向くと、先ほどの男性。
「?!」
いきなりの事に驚きを隠せなかった。
「財布忘れたの?お金借りるか?」
神のような一声をくれる。
「いいんですか?!」
「いーよ、いーよ。」
「ありがとうございます!
…あの、お返ししたいんで学年とお名前お聞きしていいですか?」