名前も知らない君を
「別に返さなくてもいーよ。」
「いえ!そういう訳にはいかないんで!」
「いいって言ってるのに。
2年3組の中山慎吾。返すの、いつでもいいからな。はい。」
苦笑いしながら答えてくれ、お金を渡してくれる。
「すみません。お借りします。
あ、私は1年9組の藤田日南子っていいます。明日、返しに行きますね!」
「おう。あ、次だぜ降りるの。」
そう言って、降車ボタンを押す。
"桜台南高校前~"
とアナウンスが入り、バスが停車する。
お金を払い、バスを降りると、
先輩が降りてくるのを待つ。
「ほんとに、ありがとうございました!!」
頭を下げながら言う。
「いいってば。じゃあ俺、朝練あるから。またな、藤田さん。」
「はい!頑張ってくださいね!」
そう言って、校門をくぐって別れる。