名前も知らない君を
「中山、慎吾 先輩…」
ぼそりと呟く。
胸のあたりがきゅーーっとなる。
痛いけど心地よい。
まだ経験したことの無い感覚だった。
…
ガラッと音をたてて教室のドアを開ける。
時間が早いためまだ誰もいない。
窓際の自分の席に座り、何気なく外を眺める。
下はグラウンドになっており、
今日はサッカー部が朝練をしていた。
(そういえば、中山先輩は何部なんだろう…?)
そう思いながらグラウンドのサッカー部を見る。
(うーん。いなそうだな~。サッカーではないのか)
遅れたのか、後から走ってくる部員がいた。
「あっ!」
つい、大きな声をあげてしまった。
それもそのはず。
その遅れてきた部員こそが
さっきまで一緒にいた中山だったのである。
(サッカー部だったんだ~。走り姿、かっこいいな。)
それからしばらく眺めていると、
軽いゲーム式の練習が始まった。
開始すると、中山にパスが通る。
(あっ、先輩だ!頑張れ~!)
「えっ!すごっ!」
心の中で言っていたつもりだったが
あまりの凄さについ声に出してしまった。
パスを受けた、と思ったら
ドリブルで相手をかわし続け
最後は見事ゴールを決めたのだ。