巡り合いの中で
「侵入者を発見するのも役目だ」
「そう仰って、本当は……」
「今回は、内緒に」
「やはり……」
「目立たないように行う」
「その言葉、信じても……」
「勿論」
「仕方ありません。今回は、聞かなかったことにしておきます。ただ、仕事の方もこなしませんと……」
セネリオは引き受けた仕事を真面目にこなし、依頼者が求める以上の物を提供するので絶大な信用を得ている。
その結果、彼の腕を求め指名してくる者も多いが、いかんせん引き受ける仕事の好みがハッキリとしているので、依頼があっても全てをこなしているわけではない。
そのような背景があってもセネリオへの指名が後を絶たないのは、彼の腕前が信頼されている証拠といっていい。
そしてライアスが心配していた趣味にも、その腕前は遺憾なく発揮される。
それは趣味の範囲といっていいのか怪しいもので、ライアスは毎回言葉を失う。
セネリオの趣味は、サーバーハッキングからはじまって独自のウィルス作成。
特に後者の場合とんでもない代物を作成することが多く、まさに知識と技術の無駄遣い。
いや、仕事ではなく趣味だからこそいつも以上に力を入れているのか、別の意味でセネリオの名前は有名だ。
しかし悲観するばかりではなく、日頃ウィルスを作成しているからこそ逆に対抗するプログラムも作成することができる。
これもまた趣味の範囲で作成しており、ライアスがプライベートで使用しているパソコンにはセネリオお手製のプログラムが複数搭載されている。
お陰で外部からの攻撃を恐れなくていいが、仕事の合間――それも趣味で作成しているのだから、セネリオは侮れない。
一部からはそのウィルスを売ってほしいという話があるが、悪用されるのはわかり切っているので決して売買に用いないところが、セネリオの良いところ。
「ところで、呼び出しの件は……」
「例の少女に会いに行く」
「なるほど、それで」
周囲のセネリオに対しての反応は〈後継者(クレイド)〉だからという枠に納まり切れるものではない。
恭しい態度と敬語の背景に隠れているのは、一種の過保護というべきものだろう。
過度に心配し、少女のもとへ行くと言った時も科学者達はざわめき、一人で行くのを許さなかった。