巡り合いの中で
その身に、何かがあったら――
それが、彼等の意見。
〈惑星イシュバール〉それが、セネリオ達が暮らす惑星の名前。
イシュバール自体惑星の中では小さいサイズに分類されるが、暮らしている者達が持つ科学力・軍事力・医療水準は他の追随を許さない。
宇宙最強と呼べる水準故に、多くの惑星が敬い裏では恐怖心を抱く。
現在、イシュバールの頂点に立ち指示を出しているのはセネリオの父親アゼルだが、周囲が〈後継者(クレイド)〉と呼ぶように、いつか父親の後を継がないといけない。
また、セネリオはアゼルの一人息子。
必然的に周囲から大事に扱われ、ついつい過保護になってしまうのは仕方ない。
この場所で、何かがあるわけがない。
苦笑しつつセネリオはそのように話すが、ライアスが首を縦に振ることはない。
いつ何があるかわからず、今回のセキュリティーの件があるので、ついつい周囲が過敏になってしまう。
また、イシュバールが持つ力を狙う者もいるので、その者達に誘拐されてしまったら――
だから、彼等は口煩く語る。
周囲の意志を汲むかたちで語るライアスに、セネリオは何も言うことができない。
流石に信頼している人物に言われたら、素直に受け入れるしかない。
それに、自分が置かれている立場も理解している。
だから何処かへ行く場合、気が許せるライアスが側にいることを望む。
「何かがありました、お守りします」
「期待している」
「微力を尽くします」
「有難う」
周囲は恭しい態度を取るので、同年代の友と呼べる人物はいなかった。
他の惑星に友を求めても、その者達はイシュバールのセネリオとしか見てくれず、友人関係を築くことができない。
しかしそのような状況の中で見付けたのはライアスで、両者の間に主従関係があってもこのように気さくに喋ることができるのは有難く、今は愚痴や不満を言える仲である。
「で、いきなり撃つな」
「撃つ?」
「少女に……だ」
セネリオに害を与える存在と判断した場合、ライアスは躊躇いなく銃を放つだろう。
まさに軍人の鏡とも呼べる性格を熟知しているので、セネリオは事前に釘を打つ。
事情徴するの前に殺された洒落にならず、何を目的にやって来たのか、また裏で誰がいるのか調べ上げないといけない。