巡り合いの中で
「それでしたら……」
「いいだろう?」
「はい」
彼等に、セネリオの行動を御する権利はない。
それに、何かがあればライアスを呼べばいい。
だからこそ、彼等はセネリオの行動に何も言うことはせず、自分達に課せられた仕事をこなす。
「ただ、ひとつ……」
「何?」
「どうしても……という時は、お呼びします。なるべくそのようにならないよう、努力致しますが……」
「わかった」
それくらいは、構わない。
それだけを言い残し、立ち去る。
退室の後一瞥しないのは、彼等を信頼している証拠。
現に彼等は優秀で、イシュバールの信頼に貢献している。
だから、全て彼等に任せた。
一人で長い廊下を歩いていると、着信を知らせる音が鳴り響く。
着信主は父親のアゼルで、これから一緒に夕食を食べようというものであった。
これから趣味に没頭しようとセネリオは考えていたが、父親からの誘いを無碍に断ることはできないので、了承することにした。
『今日は久し振りに、外で食べるか』
「いいけど」
『素っ気ないが、どうした』
「遠くに行くなと、注意されたばかりで」
『なるほど』
「注意されたばかりだから、何かあってもいけないし……一応、ライアスにだけは伝えておくよ」
『それがいい』
「で、場所は?」
『表門で待っているといい』
「わかった」
待合場所を確認したセネリオは電話を切ると、今度はライアスに電話を掛ける。
仕事が立て込んでいる場合、なかなか電話に出ないのだが、今日はすぐに電話に出てくれた。
セネリオからの着信にライアスは不信感たっぷりの声音を発するが、内容を聞いた途端、いつもの声音に戻る。