巡り合いの中で
ひとつは、手に入れた。
果たして、もうひとつは――
アゼルは、息子に気付かれないように微笑む。
そしてシートに凭れ直すと、久し振りの息子との食事を楽しもうと思う。
勿論、聞くことはきちんと聞く。
これはある意味、いい切っ掛けであった。
◇◆◇◆◇◆
父親との食事を終え、セネリオは自室に篭る。
父親との食事は嬉しかった反面、精神的に負担も大きい。
そのひとつが、誘導尋問。
仕事関係の質問は別にいいとして、父親が行った質問はプライベートに切り込む内容だった。
あの娘と、仲がいいな。
その質問に対しセネリオは「ライアスのように付き合い易いから」と、答える。
勿論、これは本当のことであって、上の者に対しても適切な意見を言う珍しい人物という点も大きい。
他の者達は〈後継者(クレイド)〉として見ており、一歩引いて接してくる。
そのことに「不満」があるわけではないが、時折対等に意見を言い合いたいと考える。
それが恵まれたお坊ちゃまの我儘と捉えられなくもないが、否定されず肯定され続けるのも気分的にいいものではない。
だから、アリエルと一緒にいる。
そう、セネリオは父親に伝えた。
(何故、父さんは……)
ふと、ある部分に引っ掛かる。
どうして、アリエルとの関係を聞く。
刹那、チクっと胸が痛みだす。
突然の反応にセネリオは胸元を握り締め反応の意味を模索するが、それについての経験と知識が乏しいので明確な回答は得られない。
勘のいいライアスが側にいれば正しい回答を提供してくれただろうが、生憎ライアスは側にいない。
ただ一人で立ち尽くし、迷い悩む。
しかしいくら考えたところで、その方面の知識がないので何もわからない。
珍しくセネリオは悪態をつくと、風呂に入ることにする。
熱いシャワーを浴びれば、体内に蓄積しているモヤモヤとしているモノが吹き飛ぶだろう。
セネリオはいそいそと、風呂に入る準備を進めた。