巡り合いの中で

(しかし、今日は何を……)

 濡れた髪を乾かしつつ、今日の予定を決める。

 といっても、いい予定が思い付かない。

 ライアスとは友人であり護衛役であっても、個人的な用事で束縛していいものではないので、彼を呼ぶのは諦める。

 それなら――

 思い付いたのは、アリエルだった。

(そういえば、まだ)

 彼女は地上にいるだけで、一度も空に上がったことがない。

 それなら一度経験をさせてみるのもいいだろうと、セネリオはアリエルを連れ空に上がろうと計画する。

 それなら早い方がいいと、セネリオはいそいそと新しい服に着替え、侍女達が休んでいる部屋に通信を入れる。

 セネリオからの通信に、侍女達が一斉に裏返った声音を発する。

 いつもの彼女達であったら冷静に対応するのだが、今日に限って別の反応を見せる。

 彼女達の反応にセネリオは何かあったのか尋ねるが、勿論事件や事故が発生したわけではなく、タイミングが良すぎた。

 先程まで彼女達は、アリエルの恋愛についてあれこれと熱く語っていた。

 その会話の途中で、セネリオから通信が入ったのだから、彼女達が「運命」の二文字を感じ取ったのは間違いない。

「で、アリエルは?」

『い、今』

「アリエル」

『な、何でしょうか』

「暇?」

『今日のお仕事は――』

『彼女は、暇です』

『大丈夫です』

『お仕事は、もう終わりました』

 アリエルの言葉を遮るかたちで、侍女達が一斉に言葉を発する。

 仲間達の発言にアリエルは驚いているのか「お仕事は、まだ……」と言い掛ける。

 しかし彼女達は、セネリオとアリエルが出掛けて欲しいので「行った方がいい」や「クレイドからの誘いよ」と、後押しする。

 仲間達の言葉に躊躇いを見せつつも、アリエルはセネリオからの誘いを了承する。

 刹那、侍女達の歓声が響き渡る。

 その歓声に慌てふためくアリエルであったが、一方のセネリオは歓声の意味を理解していないらしく、どうしてそのように騒ぎ立てるのか、淡々とした声音で尋ねていた。

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