巡り合いの中で
ライアスもまたセネリオの考えに同調できる部分があったのだろう、彼の憶測が当たってはいけないと護衛軍に支持を出しておいた方がいいと進言する。
ライアスの意見にセネリオは暫く考えるがそれが適切と判断したのだろう、そのように伝えてほしいと命令を下す。
セネリオから命令を受け取ったライアスは、連絡をする為に踵を返し医務室から退室する。
ライアスのみの退室に、医師や看護師は訝しげな表情を浮かべ互いの顔を見合うが、セネリオからの「少女は、何処にいる?」という質問によって、疑問は一方的に封じられる。
「此方に――」
「着替えされたんだ」
「汚れておりましたので」
「その服は?」
「ございますが」
「後で、第二の者に渡してほしい」
第二というのは、複数存在する研究施設の総称。
生物関係の研究を主体として行っている場所で、少女が出現したのはこの付近。
科学者の一人に土の成分分析を頼んでいるが、この服を用いればもっと事細かな情報を得ることができるのではないかと、セネリオは考える。
だから服を第二に持って行くように頼むが、医師はその理由がいまいちわからないらしく一瞬躊躇いの表情を作るも「セネリオからの命令」と自己完結したのか、了承の意志を示す。
「どれくらいで完治する」
「後、二十分程度で」
「目覚めるか?」
「それは、この娘次第です」
「そうか」
「何か、ご都合でも?」
「目覚めたら、事情聴取を行いたかった。どのような理由で来たのか、一人なのか複数なのか……」
「確か、スパイだと……」
「それは噂であって、本当かわからない。ただ、スパイであった場合……父さんが何とかする」
勿論、事情聴取が行われる前に、一方的に「スパイ」と決めつけるのも如何なものであるが、今回の出来事に関しては明らかに少女が不利になる点が多い。
目覚め事情聴取をすることができればある程度状況を把握することができるが、医師の話だといつになるかわからない。