巡り合いの中で
しかし少女の様子を見に来たので、このまま帰るわけにはいかない。
セネリオは少女が治療に当たっている、透明な特殊素材で覆われたカプセルのような機械の側に近付くが周囲の反応は芳しいものではない。
それどころか態度で「近付いてはいけない」と、訴えてくる。
「何?」
「近付かない方が……」
「何故?」
「何故と申されますと……」
「危険?」
「……はい」
「寝ている」
「で、ですが……」
「心配性だ」
勿論、言いたいことはわからなくもないが、今少女は眠っているので特別に警戒しないといけないわけではない。
それに、カプセルを覆っている素材は簡単に破壊できるものではないとわかっているので、セネリオは近付きスパイ疑惑が掛けられている少女の顔を眺める。
「若い」
「十代前半でしょう」
「このような少女を利用して……」
「何か?」
「いや、此方のことだ」
幼さが残る十代前半の少女まで利用して、その裏側で暗躍している者達は何を仕出かそうとしているのか。
イシュバールの破滅か、それとも内部からの乗っ取りか――
どちらにせよ、セネリオ側にしてみれば厄介で歓迎したくない事柄であり、判明したら徹底抗戦の構えである。
無機質な音を鳴らし扉が開閉すると、仲間への連絡を終えたライアスが医務室の中に入室する。
つい先程の癖を引き摺っていたのだろう、多くの者の前で「セネリオ」と、名前で呼びそうになってしまう。
だが、瞬時に訂正し敬称で呼びいつもの冷静な面を取り続ける。
「連絡は?」
「ご命令通り」
ライアスの言葉に了承するように頷くと、共に向けていた視線を再び少女に落とす。
これで多くの目が、不審者に注がれ発見に至るだろう。
彼等はその道のプロであり、任務の遂行に長けている。
此方が指図する必要はなく、セネリオは護衛軍の能力の高さを買っている。