巡り合いの中で
彼女達の反応も理解できるのだろう、セリナは特に咎めることはせずセネリオからの命令を話す。
次の瞬間、全員の表情が一変する。
「何故、彼女を――」という気持ちが湧き出したのだろう、一部の侍女から本当にそのようなことをして大丈夫なのか疑問の声が上がる。
「貴女達の言いたいことはありますが、これはクレイドからのご命令です。それに、何かお考えがあるのでしょう」
セリナが発する「クレイド」という言葉に、全員が押し黙る。
アリエルはその単語に相当の力があることに気付くが、今の状況で不必要な質問は自身の首を絞めると理解しているので、疑問を心の中に封じる。
ただその場に立ち尽くし、彼女達の会話に耳を傾けていた。
「どうして、侍女なのですか?」
「クレイドの話では、彼女は以前侍女の仕事をしていたそうです。それも、姫君に仕える侍女を――」
セリナの話に、全員が一斉にアリエルに視線を向ける。「姫君に仕えていた侍女」という部分に興味を示したのだろう、誰もが観察を開始する。彼女達の失礼な態度にセリナは一度手を叩き注意を促すと、姫君に仕えていたのだから礼儀作法に関しては問題ないと話す。
「ただ、見知らぬことも多いでしょう。それに関しては、教えてあげなさい。後輩の指導も大事なお勤めです」
モヤモヤとし納得いかないところもあったが、これもクレイドからの命令。
凡人では理解できない何か複雑な考えがあって、不審者である少女を侍女として働かせる。
彼女達はそのように言い聞かせると、セリナの言葉に返事を返す。
そして一人の侍女が、名前を尋ねた。
「アリエルです」
「宜しく」
言葉では好意的に示しても、雰囲気と態度がそれに伴っていない。
そのことを敏感に感じ取ったアリエルは、委縮してしまう。
監禁された方が――と一瞬考えてしまうが、一ヶ所に閉じ込められるより慣れ親しんだ仕事をしていた方がいいと、自身に言い聞かせていた。
◇◆◇◆◇◆
アリエルと別れたセネリオは、通信を受けた科学者のもとへ急ぐ。
土の成分解析の結果、どのデータにも当て嵌まらない。
未知の存在――というより、データとして収拾できないエリアから運ばれてきたと言った方が適切ではないかと、分析を行った科学者はセネリオに意見する。