巡り合いの中で
「スパイ疑惑の方を何とかしよう」
「未開惑星の住人と、公表するのでしょうか」
「手っ取り早く知らしめるには、それが一番だろう。ただ、一度疑惑を持たれると解消は……」
「時間が掛かります」
「特に、噂好きの者は……」
「侍女でしょうか」
「いや、侍女に限らず女性全般は……」
「確かに」
過去に何か女性関係で嫌な思いをしたのか、いい表情をしない。
一方セネリオも噂好きの女性に苦手意識を持っているのか、嘆息している。
これを何とかしない限り、いくらセネリオが「彼女は未開惑星の住人だ」と公表しても、アリエルにかけられたスパイ疑惑は払拭できない。
だからといってセネリオが持つ権力で一方的に抑え込んでいいものではなく、一番いい方法として時間が解決してくれることだろう。
その間、アリエルは不愉快な思いもするだろうが、これに関してあれこれと口を出していい問題ではないと、セネリオは二人に向かい話す。
「現在、彼女が置かれている状況を考えますと、それが正しいと思われます。クレイドが味方をしているとわかりますと、何と申しますか……周囲に、いい印象を与えないでしょう」
「それと、ますます偏見が……」
「噂は怖い」
セネリオの意見に、二人は同時に頷き返す。
自身の意見に同意してくれる二人にセネリオは口許を緩めると、次の言葉を発しようとするが、突如起こった爆発によって遮られてしまう。
「何だ」
「事故でしょうか」
「実験中のトラブルとか……」
「今、何か大がかりな実験をしているのか?」
「いえ、特に――」
「場所が場所だと、厄介だ。しかし今日という日は、多くの出来事が起こって休む暇がないな」
苦笑しつつセネリオは携帯端末を取り出すと、状況の説明を求める。
すると報告によると爆発が起こったのは研究施設ではなく、給湯施設。
その報告にセネリオは「どうしてその場所で爆発が起こる」と尋ねるが、相手も状況がいまいち掴めていないらしく言葉が続かない。