巡り合いの中で
「その場所にいるのは?」
『多分、侍女かと――』
「侍女?」
その単語に引っ掛かったのか、セネリオの身体が硬直する。
今、アリエルを侍女の一員として働かし、尚且つ彼女は機械文明に疎い。
それらから総合されることは――暫しの沈黙の後「犯人は、彼女かもしれない」と、口にする。
そして厄介な出来事に、盛大な溜息が漏れる。
『ク、クレイド?』
「別に、気にしなくていい。で、怪我人は?」
『今のところ、何とも……』
「他の被害は?」
『幸い、給湯施設がある場所だけで爆発は済んだ模様です。火災も起こっていませんので、ご安心を』
「それならいい」
『いかがいたしましょう』
「うん?」
『処遇です』
「そのままで構わない。それより、片付けが優先だ。給湯施設を使えないと、徹夜組が不便だろう」
『た、確かに』
「後は、任せる」
そう言い残し、セネリオは通信を切る。
すると今までの会話を聞いていたライアスが口を開き、アリエルが何か機械を破壊してしまったのではないかと話す。
それについてセネリオは頷いて返すと、可能性として考えられるのは家電類の破壊。
勿論、意図的に行ったのではない。
「使いこなせなかった」
「というより、使い方がわからない」
「だから、壊したのですか」
「そうだ」
「クレイドの話からして、それは仕方がないことでしょう。しかし、この爆発事件によって……」
「印象は悪くなる」
たとえそれを故意に行ったことでなくても、スパイ疑惑が掛けられている今、周囲の者の反応は手に取るようにわかる。
いや、それ以上に「破壊工作員」と言われてしまうかもしれない。
これは早く身元を明かしてやらないといけないと、セネリオは椅子から腰を上げた。